教育改革の推進

健康管理

園医さんのワンポイントアドバイス

幼稚園の園医さんによるワンポイントアドバイスをご紹介します。幼稚園園医 宮原小児科医院 宮原道生先生です。
2015年12月 『小児に起こる1型糖尿病』とは?
11月は暖かい日が続きましたが、最近、急激に冷え込んで参りました。感染性胃腸炎やインフルエンザが流行し始めるかもしれません。お互い、体調管理に気をつけましょう。
先日、7歳の糖尿病のお子さんの事が報道されていましたので、少し書いてみます。糖尿病は圧倒的に大人の患者さんが多く、なんとなく一般的には不摂生の末に至る状態の様なイメージを持つかもしれません。
小児に起こる1型糖尿病は、ウイルス(ほとんど風邪の原因となるもの)に感染した際に、膵臓のインスリンを出す場所(膵島:すいとう)を、自分で攻撃してしまう様に免疫が変調して、インスリンの出方が徐々に減少してしまう、という状態です。不摂生とは全く関係ありません。
インスリンは簡単にいうと、(食事→胃腸→)血液の中にあるブドウ糖を細胞の中に取り込み、細胞がエネルギー源としてブドウ糖を利用するのを手伝う役割を担っています。
これが、インスリンが全くない状態になりますと、血液の中(または細胞の外)にはブドウ糖がたくさんあるのに、細胞の中に取り込む事が出来なくなり、細胞が「もっとエネルギーをじゃんじゃん頂戴!」という指令を出して、肝臓や筋肉の中にあるグリコーゲンを分解して血糖をさらに上昇させ、グリコーゲンが無くなったら、内臓脂肪や皮下脂肪からエネルギーを作り始めます(糖新生)。血液の中にブドウ糖がいっぱいになると、血液の浸透圧が高くなり、多尿(浸透圧利尿)となって水分と塩分が体の外に出ていきます(脱水、低ナトリウム血症、循環不全)。また脂肪の燃えかすであるケトンが増加して、血液が酸性(ケトアシドーシス)になります。酸性になると水素イオンを細胞の中に取り込む代わりに細胞からカリウムイオンが血液に出てきて高カリウム血症になり、やがて心臓が止まってしまう危険性も出てきます。
残念ながらインスリンはペプチド(≒タンパク質)ですので、口から飲んだら血液に届く前に消化されてしまいます。従って、インスリンが不足していると考えられる場合は、注射薬を用います*。
幼少期に発症した1型糖尿病の方が、一日4回(毎食後の3回と就寝前の1回)の強化インスリン療法を行う事になった場合は、確かに心が痛みますが、それと真正面に向き合っている1型糖尿病の先輩たちが、サマーキャンプなどの交流で色々な事を伝授して下さいます。
アトピー性皮膚炎や癌なども、人の弱みにつけこんだビジネスが横行しています。神にもすがりたくなりますが、どうか惑わされる人が出ない事を祈りたいと思います。

*1型以外の糖尿病の場合は、患者さんの状態に合わせて食事療法、運動療法、内服薬から治療を始めます。時にインスリン注射を使用して血糖コントロールを改善させる場合もあります。
<園医>宮原小児科医院 宮原道生先生
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