教育改革の推進

健康管理

園医さんのワンポイントアドバイス

幼稚園の園医さんによるワンポイントアドバイスをご紹介します。幼稚園園医 宮原小児科医院 宮原道生先生です。
2017年5月『食中毒予防について』
一年通じて感染性胃腸炎の原因はウイルスが圧倒的に多いのですが、初夏から細菌性食中毒が少しずつ増えてきますので、食中毒予防について考えて行きましょう。
一般的な注意としましては、まず良く手を洗う事です。
生肉を調理した包丁を洗わずに生野菜を切ったり、生肉を調理したボウルなどを洗ったスポンジを消毒せず、他の食器を洗い、十分乾燥しないまま使用したりするのは危険です。
まな板、包丁だけでなく、スポンジの洗浄、消毒、食器の洗う順番にも留意して頂ければ幸いです。以下、食中毒をおこす主な細菌についてみてゆきましょう。
【カンピロバクター】・・・細菌性食中毒の原因1位です
汚染された鶏肉を感染源とすることが多い様ですが、牛、羊、野鳥からもあり、殺菌されていない牛乳や、感染動物のフンからも感染します。症状は下痢、血便、発熱、腹痛などですが、症状の組み合わせは人それぞれです。胃腸炎が回復した後の合併症として1000~2000人に1人くらいギランバレー症候群(筋肉(部位は人それぞれ)が麻痺する)になる可能性がありますので、しっかり治療する必要があります。
【サルモネラ菌】
汚染された鶏卵、牛肉、乳製品が原因になります。まれにイヌ、ネコ、ミドリガメなどのペット経由で感染する事もあります。発熱、腹痛、嘔吐、下痢、粘血便などの症状がみられます。敗血症をおこさなければ基本的に抗菌薬は使用しない事になっていますが、持病がある方は主治医とよくご相談下さい。
【出血性大腸菌・病原性大腸菌】
汚染された生肉やレバーを食べて、というのが数年前に大々的にニュースで取り上げられました。ベロトキシンという大腸菌から分泌される毒素で、水様性下痢、腹痛で始まり、血液の様な便が出て、3~10%の方が下痢発症3~14日後に溶血性尿毒症症候群(HUS)(溶血性貧血、血小板減少、急性腎不全)という合併症を起こし、ニュースの通り、不幸な転帰をたどる事もあり得ます。
【ブドウ球菌】
良く洗っていない手で調理した食事を、常温で数時間放置した場合に発生しやすく、素手で握ったおにぎりが最も有名です。ブドウ球菌エンテロトキシンという毒素が産生され、いちど出来てしまうと、レンジでチンしても毒素は壊れません。汚染された食品を食べてから発症するまで2~3時間と細菌性食中毒の中で唯一時間が短いのも特徴です。手洗いの徹底・冷所保管の励行をお願いします。
【エルシニア菌】
名前にあまり馴染みがありませんが、ブタ、イヌ、ネコ、タヌキ。イタチ、テン、ノネズミなどが保菌しており、汚染された井戸水や食品で、胃腸炎症状をおこします。高熱が続いたり、腸管膜リンパ節が腫れて強い腹痛がおこったりと、いつも遭遇する胃腸炎と症状が少し違うかも、と感じます。時に川崎病の様な症状がみられる事もあります。
【ボツリヌス菌】
1歳未満のお子さんにハチミツを与えるのはやめましょう。腸管の免疫が未熟なため、ハチミツ内に潜んでいるわずかな芽胞が発育しやすい環境です。最初、便秘症状で始まり、数日から数十日かけて麻痺症状が出ます。加工食品に微量ハチミツが使用されている場合のはっきりした見解は見当たりませんが、芽胞を死滅させるためには120℃、4分以上の加熱が必要とされており、加熱がしっかりできない場合には摂取を避けた方が無難と考えられます。
【まとめ】
ほとんどの嘔吐・下痢は、ウイルス感染が原因で、整腸剤などの対症療法で改善しますが、強い腹痛、高熱の持続、血便が時間とともにひどくなる、症状はひどくないけれど一週間たっても整腸剤だけでは下痢が治らない、反応が鈍い様な気がする、家族でほぼ同時に症状が出た、などの症状のいずれかが1つでもある場合は、細菌性胃腸炎の可能性があり、より一歩踏み込んだ検査・治療が必要になりますので、どうぞご協力お願い致します。
また、インフルエンザなどの迅速診断とことなり、細菌検査は数日から一週間程度、結果が出るのに時間が必要です。どうぞご理解願います。
<園医>宮原小児科医院 宮原道生先生
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